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看護・多職種協働加算(加算1/加算2) — 単価の「底上げ」と届出の盲点

令和8年度改定で新設された看護・多職種協働加算は、加算1(277点)と加算2(255点)の2段階。急性期一般入院料4に加算1を重ねると1,874点となり、急性期一般入院料1と完全に同点数に到達する。この加算の実務論点と、ICT機器要件との混同に注意すべき理由を整理する。

#加算#多職種#令和8年

要約

  • 看護・多職種協働加算は2段階。加算1(277点)は急性期一般入院料4、加算2(255点)は急性期病院B一般入院料に上乗せされる。
  • この加算の本質は「7対1からの軟着陸装置」。急性期一般入院料4(1,597点)+加算1(277点)=1,874点となり、急性期一般入院料1(1,874点)と 完全に同点数 に到達する。7対1維持が難しくなった病院が、10対1に下げても単価を落とさず着地できる設計。
  • 急性期病院B(1,643点)+加算2(255点)=1,898点で、急性期一般入院料1(1,874点)を24点上回る。
  • 配置基準は看護職員を含む多職種を25対1以上。疑義解釈02-036看護職員のみの配置でも算定可 とされており、他職種の追加雇用は必須ではない。ここがこの加算を「軟着陸装置」として機能させている最大のポイント。
  • 重症度・医療看護必要度の「基準①」「基準②」の両方を満たす必要があり、救急患者応需係数を加味した割合指数で判定する。
  • ICT・AI・IoT機器の使用は、A215の施設基準には一切含まれていない。別制度(医療従事者の負担軽減等を条件とする配置基準特例)との混同に注意。
  • 届出は院内の対象病棟全体で一括。病棟単位の届出はできない(疑義解釈01-013)。

加算1と加算2の構造

令和8年度改定で新設された本加算は、対象となる入院料に応じて2段階に分かれる。

加算区分点数(1日につき)対象の入院料
看護・多職種協働加算1277点急性期一般入院料4
看護・多職種協働加算2255点急性期病院B一般入院料

この加算を重ねた場合の1日当たりの実質点数。

  • 急性期一般入院料4(1,597点)+加算1(277点)=1,874点
  • 急性期病院B(1,643点)+加算2(255点)=1,898点

急性期一般入院料1(1,874点)と比較すると、前者は完全に同点数、後者は24点上回る。看護配置は急性期一般入院料1が7対1を要するのに対し、急性期一般入院料4は10対1で届出可能である点を踏まえると、「10対1で急性期一般入院料1と同水準の単価に届く」設計であることが分かる。

急性期病院Aや急性期一般入院料1〜3には本加算は用意されていないため、配置基準がすでに重い上位区分ではなく、あえて中位区分(4およびB)に対して底上げを行う構造になっている。

算定対象の病棟

本加算を算定できる病棟は次の2つに限られる。

  • 急性期病院B一般入院料を算定する病棟 → 加算2
  • 急性期一般入院料4を算定する病棟 → 加算1

この対応関係は固定されており、Bで加算1を取ったり、急性期一般入院料4で加算2を取ったりすることはできない。

配置要件と職種の柔軟性

施設基準(A215)で規定される配置要件は、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師のいずれかを含む多職種を、入院患者25人またはその端数を増すごとに1人以上配置すること。

疑義解釈02-036は、この「看護職員を含む多職種」について、看護職員のみで配置しても算定可能と明記している。「看護配置を入院基本料の基準よりも手厚くする」だけでも要件を満たせる余地がある。

さらに施設基準通知では、入院基本料等の施設基準に定める必要な数を超えて配置している看護職員を、A215の看護職員として計算してよいとされている(急性期看護補助体制加算における看護補助者みなしを除く)。つまり「既に配置されている余剰看護職員をA215にカウントする」運用が認められている。

ただし次の点は注意が必要。

  • 看護師の比率:当該病棟で必要な看護職員の合計(入院料+A215の合計最小必要数から他職種実配置を差し引いた数)のうち7割以上が看護師(准看護師ではなく)であること。
  • 他職種をA215で配置した場合、その者は勤務時間中に第2章特掲診療料(リハ料など)を別途算定できない。ただし摂食機能療法(H004)には一部例外規定あり。
  • A215配置職員は、他の入院料等で配置要件とされている従事者を兼ねることはできない。

重症度・医療看護必要度と救急患者応需係数

A215を算定するには、重症度・医療看護必要度の「基準①」と「基準②」の両方で、別表の割合指数を満たす必要がある。この「割合指数」は単純な該当患者割合ではなく、該当割合に救急患者応需係数を加えた値になる点が令和8年度改定の新要素。

指標該当患者の基準必要度Ⅰ必要度Ⅱ
基準①割合指数A3点以上またはC1点以上の割合+救急患者応需係数2割8分2割7分
基準②割合指数A2点以上またはC1点以上の割合+救急患者応需係数3割5分3割4分

救急患者応需係数の計算

施設基準通知に規定される正式な計算方法は次のとおり。

  1. 全救急搬送受入件数 × (当該入院基本料算定病床への救急搬送入院患者数 ÷ 救急搬送による入院患者数)を計算
  2. 上記を当該入院基本料算定病床数で除して「病床当たり年間救急搬送受入件数」を算出
  3. 病床当たり年間救急搬送受入件数に 0.005 を乗じたものが救急患者応需係数
  4. 上限は1割

救急搬送の受入れ実績が多く、かつその患者が該当病床で受け入れられているほど有利に働く設計。

なお、看護必要度の評価対象からは産科患者、15歳未満の小児患者、結核患者(一部要件に該当する場合)が除外される。重症度・医療看護必要度Ⅱの評価に当たっては歯科の入院患者(同一入院中に医科の診療も行う期間は除く)も対象外。

平均在院日数・自宅等退院割合・その他の要件

  • 平均在院日数16日以内
  • 自宅等退院割合の基準あり(別添2 第2の4の4の例による。つまり急性期病院一般入院基本料および急性期一般入院料1と同じ算定方法)
  • 常勤医師の員数の計算は別添2の例(第2の4の3の(2)のウの(イ)の例)に従う
  • 多職種協働の目標・業務内容・情報共有方法を文書化し、半年に1回以上見直して共有
  • 病院の医療従事者の負担軽減および処遇改善に資する体制の整備

配置された多職種は曜日や時間帯により傾斜配置することができる(病棟間の融通含む)。

ICT機器要件との混同に注意

本加算の議論でよく目にする誤解として、「ICT・AI・IoT機器の広範な使用がA215の要件」という説明がある。これは正確ではない。

A215(看護・多職種協働加算)の施設基準通知を確認すると、ICT・AI・IoT機器に関する要件は一切含まれていない。要件は上で整理した「対象病棟・配置・重症度看護必要度・平均在院日数・自宅等退院割合・文書化・処遇改善体制」などに限られる。

ICT・AI・IoT機器の「広く使用」要件は、別の制度(看護職員配置基準における1割緩和特例など、負担軽減と機器活用を条件にする別制度)で課されている要件であり、A215の届出可否には直接関わらない。疑義解釈02-035がICT機器の使用水準に触れているケースは、A215ではなくその別制度の文脈のものと整理するのが正確。

「多職種協働」と「ICT活用」は改定全体では並行して進んでいるテーマのためセットで論じられがちだが、届出時の要件としては明確に切り分けて扱う必要がある。

届出の単位

A215の届出は病棟単位ではなく、保険医療機関内の対象病棟(急性期病院B一般入院料または急性期一般入院料4を算定する一般病棟)全体で一括して行う(疑義解釈01-013)。

したがって「一部の病棟だけ看護必要度を満たすのでその病棟のみ加算を取る」という運用はできない。対象病棟のうち1つでも基準を満たさなければ全体で算定できなくなる点は、届出前のシミュレーションで押さえておく必要がある。

経過措置

令和8年3月31日時点で急性期一般入院料1または専門病院入院基本料の7対1入院基本料に係る届出を行っている保険医療機関は、令和8年9月30日までの間、A215の重症度・医療看護必要度の基準を満たすものとみなされる。

これは、改定直後に急性期一般入院料1から急性期一般入院料4に下げてA215(加算1)を取りに行くような移行を円滑にするための経過措置と読める。一方、配置基準そのものには経過措置は無いので、移行を検討する場合は半年間で基準を実態として満たす必要がある。

中小病院での導入判断

中小病院でA215を検討するときの観点。

  1. まず現区分を確認する。急性期一般入院料4または急性期病院Bでない場合、単体でA215を算定する選択肢はないので、入院料本体の区分変更とセットでの判断になる。
  2. 看護必要度の割合指数を直近1年の実績で試算する。救急搬送件数が少ない病院は救急患者応需係数が小さくなるため、分子の該当患者割合そのものを高める必要がある。上限の1割到達には、病床当たり年間救急搬送受入件数が20件以上(20×0.005=0.1)必要。
  3. 看護職員の配置に余剰があれば、まず看護職員のみの配置でA215を取りに行く案を検討する。他職種の新規雇用は人件費負担が重く、単純な加算増収と相殺されやすい。
  4. 届出は対象病棟全体での一括判断なので、一部病棟のみの算定はできないことを前提にシミュレーションする。

収益インパクトと現場負担のトレードオフ

この加算の実務上の意味は、1,597+277=1,874という完全同額の等式 にある。7対1看護配置の維持が困難になった病院は、10対1+加算1の構成に移行しても単価を落とさない。これを「軟着陸装置」と捉えると、加算1の位置づけが腑に落ちる。

つまり「急性期一般入院料1の7対1看護配置を維持するコスト」と「急性期一般入院料4(10対1)+A215加算1の配置コスト」のどちらが自院にとって軽いか、という選択問題になる。

看護師の採用競争が激しい地域や、7対1維持のための看護職員数が限界に近い病院にとっては、急性期一般入院料4への区分変更とA215の組み合わせが現実的な選択肢になる。一方で、セラピスト数が限られる中小病院では、理学療法士や作業療法士をA215の配置要員として病棟に固定化すると、疾患別リハビリテーション料の算定単位数が縮小するトレードオフが生じる。疑義解釈02-036が許容する「看護職員のみ配置」というパスを活用すれば、このトレードオフはある程度回避できる。

算定するか否かは、自院の看護必要度の実績、看護職員の配置余力、救急搬送受入実績、そして地域内での役割の4点を並べて判断するのが実務的になる。

届出実務(チェックリスト)

令和8年4月20日に厚労省が発出した 施設基準届出チェックリスト(病院用、別添1。5月1日一部訂正版が現行)では、看護・多職種協働加算は次のように位置付けられている。

項番区分内容新設/要件変更届出期限
22基本診療料看護・多職種協働加算新設令和8年6月1日

加算1と加算2は同一項番で整理されているため、届出様式(別添7「看多協」)も共通。病棟単位の一括判断が要件になる点は本文中で触れたとおりだが、チェックリストの段階では加算1・加算2の区分には立ち入らず、「施設全体で看護・多職種協働加算を届け出るか否か」のフラグとして扱われている。

関東信越厚生局では、項番22に対応する様式として様式9・10・10の5・13の2を、専用PDF 別添7(看多協) に集約している。様式13の2は令和8年度改定で追加されており、多職種配置の計画書が独立様式として切り出された格好になる。

また、5月1日付で 改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正 が発出されており、施設基準通知(保医発0305-7号)の看護・多職種協働加算の章も訂正版が現行。届出書類作成時は5/1訂正版の通知を参照のこと(加算1/加算2の点数値・基本要件は不変)。

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関連項目

本コラムは執筆時点の情報に基づいています。算定要件や届出要件の最新情報は必ず 厚生労働省の告示・通知の原文をご確認ください。