地域医療構想 ×「包括期」— 「回復期」が消える改定と、自院が名乗る医療機関機能・病床機能をどう決めるか
令和8年7月3日、厚生労働省が「地域医療構想策定ガイドライン」を公表した。最大の変更は、病床機能報告の「回復期機能」が姿を消し、「包括期機能」へと再定義されたこと。名称変更に見えて、中身は病床機能区分・必要病床数の推計方法・医療機関の役割整理までを含む2040年に向けた提供体制の作り直しであり、令和8年度改定の病棟再編(地域包括医療病棟入院料・地域包括ケア病棟入院料)と完全に地続きである。施設基準を預かる立場として、自院が名乗る医療機関機能・病床機能を診療実績データで説明できるよう、今年度中に着手すべき点を整理する。
この記事の結論
- 令和8年7月3日、厚生労働省医政局が「地域医療構想策定ガイドライン」を公表。病床機能報告の「回復期機能」が「包括期機能」へ再定義された。区分の数は4つのまま(高度急性期・急性期・包括期・慢性期)だが、実質は2040年に向けた提供体制の作り直しである。
- これは医政局が所管する「地域医療構想」の話でありながら、令和8年度診療報酬改定の病棟再編(地域包括医療病棟入院料A304・地域包括ケア病棟入院料A308-3)と完全に地続き。施設基準を預かる立場としては、両輪で自院のポジションを点検する必要がある。
- 医療機関機能は「診療報酬上の入院料の種類等のみをもって機械的に決定されるものではない」と明記された。届出=ラベルではなく、診療実績で説明できる自院の立ち位置を用意しておくことが対応の勘所になる。
- 今年度中に着手すべきは、(1) 病床機能報告を「包括期」区分で捉え直す、(2) 全身麻酔手術件数・救急搬送受入件数など機能を裏づける診療実績データの棚卸し、(3) 入院料・加算の届出状況を"目安"として整理し、2040年に名乗る医療機関機能の仮説を持って調整会議に臨む準備、の3点。
病床機能は4区分のまま、「回復期」が「包括期」へ
新ガイドラインでは、病床機能報告の区分が「高度急性期・急性期・包括期・慢性期」の4区分になる。区分の数は従来と同じだが、従来の「回復期機能」が、
「高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリテーション等を行い、早期の在宅復帰を目的とした治し支える医療を提供する機能」
を加えたうえで「包括期機能」として位置づけ直された。
背景は明確である。2040年に向けて急性期医療の需要は多くの地域で減少に転じ、代わって高齢者救急と在宅医療の需要が増えていく。その受け皿として、急性期と回復期の機能を併せ持つ「包括期」を制度の中心に据えた、という整理である。
「医療機関機能」5類型と、病床機能との対応
もう一つの柱が「医療機関機能報告」である。各医療機関は、次の4類型から自院が担う機能を選んで都道府県に報告する(大学病院本院のみ、これらとは別に「医育及び広域診療機能」を報告する)。
- 急性期拠点機能……手術・救急など医療資源を多く要する症例を集約
- 高齢者救急・地域急性期機能……高齢者救急を受け入れ、入院早期からのリハ・退院調整で早期退院につなぐ
- 在宅医療等連携機能……在宅医療の実施、24時間対応・入院対応、介護等との連携
- 専門等機能……集中的なリハビリ、中長期の入院医療、有床診療所の地域密着診療、一部診療科特化 等
病床機能と医療機関機能は一対一ではないが、ガイドラインは想定される対応を示している。急性期拠点機能を担う医療機関は高度急性期・急性期の病床を、高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関は包括期の病床を有することが想定される。専門等機能でも、「集中的なリハビリテーション」を行う医療機関は包括期病床、「中長期にわたる入院医療」を担う医療機関は慢性期病床を有する、という整理である。
医療機関機能は、複数を報告することもできる。たとえば急性期拠点機能や高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関が、あわせて在宅医療等連携機能を報告することは「差し支えない」とされている(ガイドラインⅡ.1.(1))。ただし一つだけ例外があり、急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性期機能の2つは、医療資源を多く要する医療と高齢者救急の役割分担を明確にする趣旨から、「両機能を一つの医療機関が報告することはしない」と明記されている(同)。急性期の“拠点”を担うのか、高齢者救急の受け手に軸足を置くのか──ここは自院として一度決めておく必要がある。
ここが要注意 ──「入院料で機械的に決まる」わけではない
実務で誤解しやすいのがこの点である。ガイドラインは、報告する医療機関機能は「診療報酬上の入院料の種類等のみをもって機械的に決定されるものではない」とし、「特定の診療報酬項目の届出の有無を各医療機関機能の必要条件や十分条件のように取り扱うことは適切ではなく、地域における診療実態等を総合的に検討し、協議すること」と釘を刺している。
つまり、「地域包括医療病棟を届け出ているから自動的に○○機能」という決め方はできない。入院料や加算の届出状況は"目安"として参照しつつ、地域での診療実態・診療実績データを踏まえ、地域医療構想調整会議での協議を通じて機能を決めていく、という建て付けである。届出=ラベルではなく、診療実績で説明できる自院の立ち位置を用意しておくこと。ここが対応の勘所になる。
診療報酬側との地続き ── 包括期の受け皿はどこか
「包括期」を診療報酬で体現するのが、地域包括医療病棟入院料(A304)と地域包括ケア病棟入院料(A308-3)である。令和8年度改定では、A304が一般病棟入院基本料の併設状況に応じて「入院料1・入院料2」に区分化され、さらに緊急入院・手術の有無で算定区分が分かれる構造になった。A308-3も、リハビリ・栄養・口腔連携の評価やFIM測定に係る研修の要件化など、早期リハ・在宅復帰を後押しする方向で見直されている。
高齢者救急を入院早期からのリハで早期在宅復帰につなぐ、という「包括期」のコンセプトが、地域医療構想(機能)と診療報酬(入院料)の両面で同じ方向を向いている──ここを押さえると、自院がどの入院料でこの流れに乗るかの議論がぶれない。(各入院料の点数・区分・施設基準の詳細は、続くコラムで個別に取り上げる。)
スケジュールと、今年度中にやること
策定スケジュールは改正医療法(令和7年法律第87号)に基づき、次のとおりである。
- 2026〜2027年度上半期頃……医療需要の見通しや医療提供体制の現状をデータで分析、構想区域の点検・見直し
- 遅くとも2028年度まで……各医療機関が2040年に担う医療機関機能を決定、地域医療構想として策定
- 2029年度頃……第9次医療計画を策定(地域医療構想は医療計画の一部)
- 2035年頃……成果の確保
現行の地域医療構想・病床機能報告は令和8年6月末をゴールに区切られ、7月公表の新ガイドラインから次のフェーズに移る。自院として今年度中に着手すべきは、(1) 病床機能報告を新しい「包括期」区分で捉え直すこと、(2) 全身麻酔手術件数・救急搬送受入件数など、機能を裏づける診療実績データの棚卸し、(3) 現行の入院料・加算の届出状況を"目安"として整理し、2040年に名乗る医療機関機能の仮説を持って調整会議に臨む準備、の3点である。
必要病床数の推計も刷新された。算出に用いる病床稼働率が、低い外れ値を除いた中央値により「高度急性期78%・急性期83%・包括期87%・慢性期92%」に改められた(従来は高度急性期75%・急性期78%・回復期90%・慢性期92%)。さらに医療DX等による効率化分として、高度急性期・急性期+1%、包括期+2%、慢性期+0.5%が上乗せされる。加えて、これまで急性期と区分してきた75歳以上の患者のうち5割を引き続き急性期の需要、残りの5割を包括期の需要として見込む、という考え方も導入された。地域全体で見れば、急性期病床は絞られ、包括期へシフトする力学が働くということである。
まとめ
「回復期が包括期に変わった」は、単なる呼称の付け替えではない。病床機能・医療機関機能・必要病床数・診療報酬が同じ方向で動く、2040年に向けた再設計の入口である。まず自院の病床機能報告と入院料の届出を「包括期」の目線で整理し、診療実績データで説明できる自院の機能仮説を持つこと。それが、調整会議でも次期改定対応でも、有利な立ち位置を取るための第一歩になる。
出典(一次ソース)
- 厚生労働省医政局「地域医療構想策定ガイドライン」(令和8年7月公表)
- 「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」(令和8年3月19日/地域医療構想及び医療計画等に関する検討会)
- 医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)
- 令和8年度診療報酬改定 告示・通知(A304 地域包括医療病棟入院料/A308-3 地域包括ケア病棟入院料)
※病床稼働率・DX効率化分・スケジュール等の数値は上記ガイドライン原本により確認済み。点数・施設基準の細目は続編コラムで告示・保医発の原文により個別確認のうえ掲載する。