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地域包括ケア入院医療管理料の在宅復帰率、令和8年6月から計算式が変わる — 病室から同一病棟内一般病床への転床がカウント対象に

令和8年度改定で、地域包括ケア入院医療管理料1〜4の在宅復帰率(72.5%/70%)の算出方法に『読み替え規定』が新設された。R6時代には明文化されていなかった『病棟以外の病棟』→『病床以外の病床』の読替により、同一病棟内で管理料算定病室から一般病床へ転床した患者が新たに分母・分子のカウント対象となる。施行は令和8年6月1日。5月31日までの算定は従前どおりだが、6月分以降の届出・自院モニタリング数値はR8基準で計算する必要がある。

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この記事の結論

  • 令和8年度改定の通知(基本診療料施設基準等 別添4 第12)で、地域包括ケア入院医療管理料の在宅復帰率算出に**『病棟以外の病棟』→『病床以外の病床』への読み替え規定**が新設された。R6では存在しなかった条文である。
  • 明文化されたのは入院医療管理料1(3(1))と3(7(3))。2(5(2)が3(1)を参照)と4(9(2)が7(3)を参照)にも参照構造を経由して同じ読替が適用される。1〜4すべてが対象
  • 結果として、同一病棟内で「管理料算定病室」から「同一病棟の管理料算定外の一般病床」へ転床した患者が、令和8年6月1日以降は分母(退院患者数)にも控除対象(=分子から差し引かれる転棟患者)にも算入される。
  • R6時代は「管理料の算定単位は病室」「読替の明文がない」ため、同一病棟内の一般病床への転床はそもそも『他病棟への転棟』に該当せず、分母にも分子(から控除する数)にもカウントしない解釈で実務が回ってきた。この扱いがR8で逆転する
  • 施行は令和8年6月1日。5月31日までの算定は従前のR6基準で問題ない。ただし、6月1日以降の届出(様式40の3)および月次の自院モニタリング数値は、R8基準=新しい読替を反映した計算式で算定する必要がある。
  • 「うちは管理料を取っているから、同一病棟内での一般病床への転床は無関係」という旧来の感覚で6月以降も計算してしまうと、72.5%または70%の閾値を下回る可能性が出てくる。5月のうちに、過去6か月の転床実績をR8基準で試算しておくことを強く勧める

何が明文化されたのか — R6とR8の通知本文を並べる

ポイントは、地域包括ケア病棟入院料(病棟単位)と地域包括ケア入院医療管理料(病室単位)で、在宅復帰率の算出方法に差があった点である。前者は病棟単位なので「他病棟への転棟」が定義として明確だが、後者は病室単位なので「同一病棟内で算定病室から一般病床へ転床した場合に、それを『他病棟への転棟』に含むのか」が長年グレーだった。

R6通知(旧):読替の明文がない

3 地域包括ケア入院医療管理料1の施設基準 (1) 当該病室において、退院患者に占める、在宅等に退院するものの割合が7割2分5厘以上であること。なお、割合の算出方法は2の(2)の例による。

R6では「2の(2)の例による」とだけ書かれている。参照先の2(2)アの④は「同一の保険医療機関の当該入院料にかかる病棟以外の病棟への転棟患者の数」と書かれており、『病棟』が単位として読める。管理料は病室単位なので、「同一病棟内で算定病室から一般病床への転床」は『他病棟への転棟』に当たらず、分母(退院患者数)にも分子側の控除対象にもならない、というのが従前の実務解釈だった。

R8通知(新):『病棟』→『病床』への読替が新設

3 地域包括ケア入院医療管理料1の施設基準 (1) 当該病室において、退院患者に占める、在宅等に退院するものの割合が7割2分5厘以上であること。なお、割合の算出方法は2の(2)の例による。ただし、2の(2)のアの④の「同一の保険医療機関の当該入院料にかかる病棟以外の病棟への転棟患者の数」については、「同一の保険医療機関の当該入院料にかかる病床以外の病床への転棟患者の数」と読み替えるものとする。

R8で追加された「ただし、〜読み替えるものとする」が今回の論点である。算定単位を病室に揃えるための読替であり、同一病棟内であっても、管理料算定病床以外の病床(=同一病棟の管理料外一般病床)への転床は、『当該入院料にかかる病床以外の病床への転棟患者』として控除対象に算入されることが明文化された。

入院医療管理料3(在宅復帰率70%)にも同じ構造の読替規定が R8 第12-7(3) に新設されている。入院医療管理料2は5(2)が3(1)を、入院医療管理料4は9(2)が7(3)を参照する作りなので、1〜4すべてに同じ読替が及ぶ

計算式:何がどう変わるのか

在宅復帰率の計算式は次のとおり。

                ア(分子)
在宅復帰率 = ─────────────
                イ(分母)

イ:直近6か月に当該病棟(病室)から退院・転棟した患者数
   (通則5の通算再入院患者・死亡退院患者を除く)

ア:イ から下記①〜④の合計を控除した数
  ① 他の保険医療機関に転院した患者の数
  ② 介護老人保健施設(在宅強化型・在宅復帰機能強化加算系)に入所した患者の数の5割
  ③ 介護老人保健施設(②以外)に入所した患者の数
  ④ 同一の保険医療機関の当該入院料にかかる
     R6: 病棟以外の病棟への転棟患者の数  ← 「病棟」単位で読む
     R8: 病室以外の病室への転棟患者の数  ← 「病床」単位で読む(読替後)

差分は④だけだが、影響は大きい。

具体例:1病棟40床のうち6床が地域包括ケア入院医療管理料1を算定、直近6か月の動きが下記の場合

区分患者数
算定病室から在宅退院10人
算定病室から他病院へ転院(①)2人
算定病室から老健(在宅強化型)に入所(②)2人(→控除1人)
算定病室から老健(一般)に入所(③)1人
算定病室から同じ病棟内の一般病床へ転床(④)5人
死亡退院(分母から除外)2人
通則5の再入院(分母から除外)0人

R6基準では④に該当する転棟は0人(同一病棟内の転床は『他病棟への転棟』に該当しないため)。R8基準では④に5人がカウントされる。

■ R6基準
イ(分母) = 10 + 2 + 2 + 1 + 0 = 15 人
   ※「同一病棟内の一般病床への転床5人」は分母にも入らない(同一病棟内の動きは
     『退院・転棟』として認識しない、というのが従前の現場運用)

ア(分子)= 15 − (① 2 + ② 1 + ③ 1 + ④ 0) = 15 − 4 = 11 人

在宅復帰率 = 11 / 15 = 73.3% → 72.5% 以上クリア

■ R8基準
イ(分母) = 10 + 2 + 2 + 1 + 5 = 20 人

ア(分子)= 20 − (① 2 + ② 1 + ③ 1 + ④ 5) = 20 − 9 = 11 人

在宅復帰率 = 11 / 20 = 55.0% → 72.5% 未達

同じ実態でも、R6基準では73.3%でクリアだったものが、R8基準では55.0%で大幅未達になる。これは極端な例だが、「管理料病室で在院日数を伸ばせない症例が出たら同一病棟の一般病床に動かす」運用をしている病院では、影響が無視できない。

なお、上記の旧基準の解釈(同一病棟内の管理料病室から一般病床への転床を分母・分子のいずれにも算入しない)は、現場運用および疑義解釈の通り読みに基づくものであり、厚労省から積極的に肯定された運用ではない点には留意されたい。R8で読替が明文化されたということは、裏返せば「R6時代から本来はこう数えるべきだった」とも読める。R6時代の届出書の数値について溯及的に問題になることは現実的には考えにくいが、6月以降は明文化された基準で計算する必要があることは確実である。

経過措置はあるか — 残念ながら「ない」

R8通知 第12-1(13) には経過措置が置かれているが、これは1(2)(重症度・看護必要度の評価)のみが対象で、令和8年9月30日までは従前の例によるとされている。3(1)・5(2)・7(3)・9(2) の在宅復帰率の読替規定には経過措置が置かれていないため、施行日の令和8年6月1日からそのまま適用される。

「令和8年3月31日時点で届出済みの保険医療機関は当分の間〜」のような救済もない。今回の読替は『計算方法の整理』であって、実体要件(72.5%・70%という閾値自体)の変更ではないため、経過措置を設ける論理がそもそも置きにくかった、と推察される。

5月31日までにやっておくべきこと

  1. 過去6か月の転床実績の棚卸し。地域包括ケア入院医療管理料の算定病室から、同一病棟内の一般病床への転床がどれだけあったかを把握する。電子カルテの転床ログまたは入退院管理システムから抽出できる。
  2. R8基準での試算。上の計算式に当てはめて、6月以降提出する届出書(様式40の3)の数値が72.5%(管理料1・2)または70%(管理料3・4)を下回らないかを試算する。
  3. 下回る見込みなら運用の見直し
    • 管理料算定中の患者を同一病棟の一般病床に転床させずに、可能な限り在宅復帰に向けた退院支援を強化する。
    • 同一病棟内の管理料病室の床数配分の見直し(管理料病室と一般病床の動線・配置を整理)。
    • 在宅復帰支援の介護老人保健施設(在宅強化型)との連携を強化し、②に該当する転帰(控除率5割)を増やす。
  4. 届出書類のレビュー。様式40の3の記載要領は変わらないが、内部で使う計算ワークシートはR8基準に更新しておく。
  5. 疑義解釈の追加発出を注視。今回の読替について実務的な解釈疑義(例:転床日を跨いだ場合の取扱い、退院翌日に再入院した場合の取扱い)が出てくる可能性が高い。令和8年度の疑義解釈その6以降で示される可能性があるため、6月以降の発出に注意する。

似たような『R8で静かに明文化』論点はほかにもある

今回の読替規定のように、R6時代には明文化されておらず、現場の通り読み・運用に委ねられてきた論点が、R8で正式に通知文化されているケースは他にも複数ある。例えば:

  • A100 一般病棟入院基本料の重症度・看護必要度Ⅱでの救急患者の取扱い
  • A246 入退院支援加算における協力医療機関定めの取扱い
  • O000〜O003 ベースアップ評価料の通則第11号減算の発動条件
  • B001-10(新設)心不全再入院予防継続管理料の起算点

これらはいずれも、「実態は前から運用されていたが、R8で初めて明文の根拠が置かれた」ものであり、過去の届出ベースで運用を続けている医療機関ほど影響を受けやすい。本誌では今後も同種の論点を取り上げていく予定である。

まとめ

令和8年6月1日施行のR8通知で、地域包括ケア入院医療管理料1〜4の在宅復帰率算出に『病棟以外の病棟』→『病床以外の病床』への読み替え規定が新設された。同一病棟内で管理料算定病室から一般病床に転床した患者が、新たに分母(退院患者数)と控除対象(分子から差し引かれる転棟患者)の両方にカウントされる。「うちは関係ない」と思っている医療機関ほど、5月のうちに過去6か月の転床実績をR8基準で試算しておくことを強く勧める

参照根拠

  • 厚生労働省保険局医療課長通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月発出)別添4 第12「地域包括ケア病棟入院料」
    • 3(1) 地域包括ケア入院医療管理料1の施設基準
    • 5(2) 地域包括ケア入院医療管理料2の施設基準(3(1)を参照)
    • 7(3) 地域包括ケア入院医療管理料3の施設基準
    • 9(2) 地域包括ケア入院医療管理料4の施設基準(7(3)を参照)
  • 比較対象:同令和6年版通知 別添4 第12 3(1)・5(2)・7(3)・9(2)(読み替え規定の記載なし)

関連項目

本コラムは執筆時点の情報に基づいています。算定要件や届出要件の最新情報は必ず 厚生労働省の告示・通知の原文をご確認ください。